【Meta Quest 3 レビュー】PCVR用途ならPico4でいいかも

HMD

主にVRChatをPCVRで楽しむためにPico4とQuest2を既に利用している筆者ですが、今回Quest3を購入しましたので比較も交えつつレビューします。主にPCVRでVRChatを遊んでいるユーザーが気になりそうなポイントをレビューしていきます。主に公式サイト等で記載されているスペック表からは読み取れないマニアックな部分に踏み込んでいきます。

画質

今回のQuest3はPico4と同じパンケーキレンズが採用されており、画素数もおおよそ同じで、カタログスペックだけ見るとかなり似ています。実際装着してみると、画質面ではこの2機種はかなり近いと感じます。しかし、Pico4と比べてQuest3のほうが良いと感じるポイントもありました。以下にそれらを記載していきます。

輪郭・色がきれいに見える

Quest3でみる映像はPico4と比べて少しだけ綺麗に見えます。写真を交えて違いを解説していきます。

写真で比較(にじみ・色)

写真は一眼カメラを使って撮影しました。カメラの設定(色温度,絞り,ISO,SS)はすべて同じです。

※クリックすると拡大できますが画像容量(最大で25MB)が大きいので回線によっては読み込みに時間がかかります。

全体的に比較するとまず色が異なることがわかります。Pico4のほうは全体的に黄色みが強いです。特に小さい文字を見るとその違いが分かりやすいですね。色の正しさという点ではQuest3に軍配があがりそうです。

今度は先ほどの写真を拡大して見ていきましょう。Quest3はPico4と比べて光が滲まずクリアに写っています。Quest3はPico4と比べて光がぼやけずに明瞭に見えます。VRChat上では遠くのもの(小さく見えるもの)も明瞭に見え、より立体的に見える印象があります。

ただ、Pico4も決して画質が悪いわけでなく、両方をつけ比べて初めて分かる程度の小さな差です。筆者個人としてはPico4でも十分に綺麗だと思います。

動画で比較(フレア)

動画はスマートフォン(Galaxy Note 20 Ultra 5G) で撮影しました。VirtualDesktop でPC画面を表示して、ダークモード表示の X(Twitter)のスクロールをしてみました。

画面全体が暗い状況で明るいものが画面内に表れると、明るいものの光が暗い部分にも乗ってくる現象をフレアといいます。 動画を比較するとPico4では、TLに明るい画像が現れるとTLの右側の黒い部分の色が明るくなりますが、Quest3では同様の状況でも色が明るくなりません。Pico4と比べてQuest3はフレア現象は起こりにくいようです。

視野の広さ

実際にPico4とQuest3でVRChatのワールドで同じ場所で同じ方向に向かったときに、右目の視界に見える範囲をQVPenで書いてみました。ヘッドセットの切り替え時にSteamVRを再起動する必要があったため、Pico4とQuest3のそれぞれで撮影した写真を合成しての比較です。

黄色いペンがPico4、緑色のペンがQuest3で見えた範囲です。若干Pico4のほうが視野が広いようです。実際に利用しているときの印象としても、Pico4のほうが視界が開けているような印象でQuest3はレンズをのぞき込んでいる感覚があります。

また、これはイメージでの説明になるのですが、なぜかQuest3では、両目で見たときに視界の隅が角ばって見えます。片目で左右のレンズの視界を個別に確認するとそれぞれのレンズから見える視界は丸いのですが、なぜか両目でみると外側が角ばって見えます。Pico4の円形に見える視界に慣れていると、かなり違和感を感じます。これに関してはもしかしたら筆者の目の特性の問題かもしれません。IPDを狭めたり広げたり色々試してみましたが、筆者にはこのように見えます。※もし病気の可能性があるのであれば、指摘ください!

PCVR利用時の映像の画質(AV1/HEVC/H.264の比較)

Quest3、Pico4、Quest2などのスタンドアロンタイプのVRヘッドセットでPCVRを遊ぶ際は、PC側で圧縮された映像がヘッドセットに転送されて表示されています。この方式は無線でVRを楽しめるなどのメリットがありますが、その圧縮をする過程で映像の劣化が発生し画質が悪くなるというデメリットもあります。

今回Quest3は次世代の映像圧縮方式「AV1」に対応しています。VirtualDesktopを使ったPCVRを行う際に、同じく「AV1」に対応したGPU(RTX4000シリーズ、RX7000シリーズ)のPCと組み合わせて利用すると、「AV1」を利用することができます。「AV1」はこれまでの映像圧縮方式「HEVC」「H.264 」と比較して映像の劣化が少ないと言われています。そのため、「AV1」を利用できるQuest3では、より高画質なPCVR体験ができる可能性が期待されていました。実際にどれぐらいの画質の違いがあるのかを画像で比較していきます。画像はQuest3側のスクリーンショット撮影機能を用いて撮影したものです。映像圧縮は森林のような画面の情報量が多いワールドで特に映像圧縮の質が低下するため、森林のワールドで写真を撮影し比較してみました。テストに用いたワールドは下記URLより。

VRChat - Home
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高画質設定(200Mbps)での比較

まずは200Mbpsの設定で違いを比較してみました。AV1とHEVCでは違いが判別できずH.264 は若干映像にノイズが乗っている印象でした。上の画像で見比べてもそれほど大きな差があるようには見えませんでした。

低画質設定(20Mbps)での比較

次に20Mbpsの設定で違いを比較してみました。この場合も、AV1とHEVCでは違いが判別できませんでした。上の画像を比較すると、若干AV1の画質が良好に見えます。また、H.264 はAV1やHEVCと比べて映像が明らかに劣化しています。一目でH.264 は画質が悪いことがわかりました。上の画像でも空の青色がモヤっとしており、画質が明らかに悪いことがわかります。

AV1に過度の期待はしないほうがいいかもしれない

次世代の圧縮方式という割に期待以上の画質の差を感じることができなかったので、この方式について調べてみました。

NVIDIAの宣伝ビデオでRTX4000シリーズで「AV1」対応のメリットを宣伝している動画がありましたので確認してみましたが、AV1との画質の比較にはH.264が採用されていました。もしHEVCと比べて画質の差がわかりやすいのであれば、HEVCとの比較を乗せるとおもいますので、NVIDIAから見てもAV1とHEVCは分かりやすい画質差はなかったのかもしれません。

HEVCは複数の企業の利権が複雑に絡み合い企業が製品で利用する際に扱いづらい規格だったようです。そして、HEVCの対抗馬としてライセンスフリーで利用できる規格を目指して開発されたのが「AV1」だったようです。HEVCと同等ぐらいの圧縮品質であれば、ライセンスフリーで使えるAV1は企業にとっては存在意義が十分にあります。ですので、「AV1」は他を明確に圧倒するほどの画質を目指して開発はされてないのだと想像します。

ちなみに、筆者は画質の違いを認識することができませんでしたが、「細かいものが綺麗に見える」「振りむいたときに乱れにくい」という声も聴いてます。ですので、もしかしたら筆者の目が悪いだけかもしれません。

PCVR用ヘッドセットとしての使い勝手

純正ソフトよりVirtual Desktop の利用がおすすめ

Quest3はMetaが公式に配布しているソフトを用いてPCVRを遊べます。しかし、そちらではQuest3の画質を十分に発揮することができない印象です。有料のソフトですが、サードパーティーのソフトである「Virtual Desktop」を利用するとよりクリアな視界で遊ぶことができます。また、そのほかにも多々メリットがあり、それはこちらの記事で紹介していますので、良ければご確認ください。

電池を切らさずに使い続けることは可能

Quest3は「PD」という充電規格に対応しており、「PD」を使うと電池が切れないように給電しながら遊ぶことができました。ただし、「PD」を利用するには対応するケーブルとACアダプターの組み合わせが必須です。実際に複数のケーブルや充電器を使って遊んでみました。給電量はケーブルを流れてる電力を測定できるアダプターを差し込み確認しました。

ACアダプターケーブルPD充電可能か(給電量)給電しながら遊ぶと
※VD(GodLike 120Hz 動作)
Quest3 付属品(18W)Quest3 付属品(1m)〇(11W~12W)※短いため遊びながらの利用が困難
Quest3 付属品(18W)PD対応ケーブル(3m)〇(11W~12W)〇 少しずつ増える
Quest3 付属品(18W)PD非対応ケーブル(5m)× (6W)×  少しずつ減る
PD充電器(60W)PD対応ケーブル(3m)〇(16W)〇 少しずつ増える

上記の表のとおり、Quest3購入時に付属してくるACアダプターとケーブルはPD充電に対応しています。しかし、長さが1mしかないため遊びながら使うには長さが足りません。そのためPD対応の比較的長めのケーブルを使うことで、電池残量を気にせずに遊ぶことができるようになります。

上記で実際に利用している3mのPD対応ケーブルはデータ通信速度は遅いため充電専用で使うことになりますが、軽くて取り回しがよく筆者はとても気に入っています。Pico4でも同じ使い方ができ、かれこれ1年近く利用しています。下記にAmazonのリンクを貼っておきます。

Amazon.co.jp

※当サイトはAmazonアフィリエイトに参加してます。応援してくださる方は上記URLから製品を購入いただくと筆者にちょっとだけお小遣いが入ります。

また、一部のマニアックな方向けに給電時の電圧と電流量がわかる写真を掲載しておきます。20V給電のPDに対応のACアダプターでも、12V給電でした。そのため、Quest3は20VのPD充電には非対応で、最大で12Vだと思われます。

頭上のトラッキングは苦手

Quest3は上方向にカメラが付いていないので、ほかの機種と比べて上方向のトラッキングに少し弱いです。頭上で頭より後ろ側に手を持っていくと確実にトラッキングが狂います。とはいえ、頭より後ろに手を持っていくことは、あまりないのでほとんど困らない印象です。ダンスをするような方以外はあまり気にしなくていいように思います。

実際にトラッキングがあらぶっている様子は下記の動画から確認ください。

※少しふざけてます。音量注意

パススルー機能でリアルの世界をきれいに見れる

VRヘッドセットの多くは本体カメラを介して外の世界を見ることが可能です。この機能をパススルー機能といいます。Quest3はパススルー用のカメラの画質がよく、ほかのヘッドセットと比べてより高画質にリアルの世界を見ることができます。そして、PCVRで遊ぶ際にもVirtual Desktopを利用することで、その機能を活用することができます。

写真は腕の周りにリアルの世界が映るように設定したときの様子です。この機能自体はQuest3だけでなく、Pico4などのほかのヘッドセットでも利用できます。しかし、Quest3以外のヘッドセットでは機能を有効にするにはVirtualDesktopの画質設定を落とす必要があります。また映し出されるリアルの世界もQuest3ほど綺麗ではありません。パススルー機能を高画質に使いたいなら、Quest3一択でしょう。

なお、この機能を活用する際、↓のギミックが非常に便利でした。Modular Avator対応で簡単に導入できます。

VirtualDesktop1.29.0以降向け 部分パススルー補助ギミック - シリアルのお店 - BOOTH
...

その他こまごまとしたこと

そのほか他のサイトでも触れられてそうな内容は軽くリストアップで記載します。

  • 標準ストラップの付け心地はQuest2と比べたら格段にいい
  • Pico4と比べると装着時は重さを感じやすく疲れやすい
  • コントローラーがPico4やQuest2よりも軽く持ちやすい

総評:高いなりに素晴らしいけど、PCVR用途だとPico4と大差はない

最後にQuest3の総評をまとめると、Quest3は画質もよく、パススルーなどの機能面も含めて非常に面白くてワクワクするヘッドセットです。

ただ、PCVR用途だとPico4とそれほど大差はないようにおもいます。Pico4をPCVR用ヘッドセットとして使っている人は、Quest3に買い替えても劇的な感動は得られないと思います。ただ、Quest3単体でしか動かないアプリ等もあるため、単体で遊ぶことも考えるならQuest3一択です。値段が8万円近くとなっており、これからVRを始める人からしたら非常に高価なヘッドセットですので、購入を迷ってる方はご自身の用途とお財布事情も含めて検討するとよいでしょう。

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