Intel グラボでVRChat はできる(ただし、大量の注釈付き)

VRChat動作検証結果

グラボといえば多くの人がNVIDIAのGeforce、AMDのRADEON を思い浮かべると思いますが、実はIntelも2022年からグラボ事業に参入してます。現時点では、これを買うメリットが全くないため誰も買っておらず話題に上がることはほとんどありません。ただ、稀に異常な特価価格で売っていることがあり、筆者もその特価品が安く入手できました。(パソコン工房実店舗:特価セール金額¥31,800 )せっかくなので、実際にVRChatを動かしてみましたので、結果を記事にします。

今回のグラボ Intel Arc A770 16GB

Sparkle Intel Arc A770 Titan OCエディション 16GB GDDR6 ThermalSync 破れた冷却 アキシャルファン メタルバックプレート SA770T-16GOC
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SPARKLE Intel Arc A770 TITAN OC Edition SA770T-16GOC

Intel Arc A770 モデルは、2024年8月時点でIntel グラボの最上位モデルにあたります。ただ最上位モデルといっても、性能は大したことはありません。ゲーミング性能はせいぜいRTX 3060Ti 程度です。このA770はVRAM8GB版と16GB版の2種類があります。VRAM16GB版は、VRAM不足でfpsの急激な低下に苦しめられることが多いVRChatユーザーには、非常に魅力的なグラボに見えます。

今回の検証環境

OSWindows11 Pro
CPURyzen 7 8700G
GPUIntel Arc A770 (16GB)
(Driver 31.0.101.4502)
メモリ32GB
HMDQuest 3
HMD⇔PCの接続方法Virtual Desktop (ver 1.30.5)
片目当たり解像度2446 x2592
HMD Hz90
SteamVR SS設定100%
VRChat MSAA(Multisample Antialiasing)x2

今回A770を動作させたPC構成・ドライバーバージョンと設定は上記表のとおりです。今後ドライバーのバージョンアップ等で状況が変わる可能性があるため、あくまで2024年7月時点の検証結果である点をご留意ください。

Intel Arc グラボでVRChat を動かすための前提条件

さて、2022にデビューしたばかりのIntel Arc GPUですが、歴史の長い他社グラボと比べると、ドライバー周りの成熟度が低く様々な問題があります。発売から2年経過した今はかなり改善されたようですが、PCVR用途だと未だに他のグラボでできることができません。たとえば、Meta Quest 3 などのHMDとPCを接続する手段が限定されます。

Quest とPCの接続方法利用可否備考
Meta Link×・接続すらできない
Steam Link×・接続すらできない
Virtual Desktop ・不安定な時がある
 (まれにVRChatが起動できない)
・エンコード方式はH.264 限定
(他を選ぶと不安定になる)
・Intel Arc は Virtual Desktop 公式のサポート対象外
 (いつ動かなくなっても誰もサポートしてくれない)
動作確認環境 Windows 11 Pro Intel Arc ドライバー ******** Virtual Desktop Version :

Occlus Link (Meta Link ) はPCのハードウェアが非対応である旨の警告が表示され、接続すらできません。Steam Link もHEVCエンコーダーに非対応であることが表示されて利用できません。有料の接続ソフトウェアであるVirtual DesktopはIntel Arcに非対応ながら一応利用できます。ただし、私の環境だと10%ぐらいの確立で起動に失敗しました。HMDとPC間の接続に失敗することは全くないのですが、VRChatを起動するタイミングでSteamVRがハングアップして動かなくなることがあります。この現象が起きたときはOSごと再起動しなおすと正常に起動して対処できます。

繰り返しになりますが、Virtual Desktop もIntel Arc をサポートしていません。そのため、私が試した環境では動作しましたが、ドライバーやVirtual Desktopのバージョンによっては、正常に動作しない可能性がある点はご注意ください。また、動画エンコード方式はH.264以外を選ぶと劇的にパフォーマンスが低下しますのでこれも注意点です。

OVR Advanced Settings   ココ↑に出てくるはずの画面が見えない

なお、VRChatユーザーの必需品とも言える、 OVR Advanced Settings の設定画面が表示できないため、設定ができず使用できませんでした。結構致命的ですね。

絶望的に読みづらいBIOS画面

ちなみに、VRChat関係なく困る仕様がありました。デフォルトのHDMIからの映像出力が640 x 480 です。現在のPCがこんな低解像度を想定してるはずもなく、BIOS画面の文字がつぶれて殆ど読解が不可能でした。また、Windows11の初期セットアップ画面でUIが崩壊して一部の操作ができませんでした。ドライバーが適用されるとフルHDで表示されますが、BIOS操作は何をしても低解像度のままなので非常に操作がしづらいです。

fps はどれぐらいでる?

ここまでボロクソ書きましたが、パフォーマンスは同価格帯のグラボと比べてなかなかに優秀です。なお、ここで言っている価格というのは、中の人が入手した時の特価セール金額¥31,800 です。

VRログイン時の平均fps

中の人が実際に12時間VRChatにログインしていつも通りすごした結果、平均fpsは55.62 でした。上の表は、同様の方法で多くの人からいただいた測定データと組み合わせて比較したものです。遊び方や設定が異なるため厳密な比較はできませんが、4万円ほどするRTX3060と比べてもワンランク上の性能を発揮しているように見えます。

Public ポピ横 70人インスタンスでも生き残れる

パブリックのポピー横丁にて、リスポーン地点付近で前を見た時のfpsVRダッシュボード

VRAMを16GB積んでるのは、やはり良い効果があります。70人ほど人がいるパブリックのポピー横丁にセーフティの設定をすべて切った状態で行ってもパフォーマンスの問題はありませんでした。視界ジャックが酷すぎたし卑猥な画像を見せつけられたりしましたが笑。VRAM不足で劇的にfpsが低下することはなく、30fps 以上を安定してだせていました。4Kで写真を撮ってもフリーズする時間は長くなく、落ちそうな不安定さはありませんでした。

fpsの乱高下は激しめ

ここまでパフォーマンスに関してもポジティブな部分を紹介しましたが、やはりまだパフォーマンス面でも不安はあります。価格帯が近くVRChat ユーザーにお勧めのグラボである、RTX3060を搭載したPCとパフォーマンスを比較してみました。異なるCPUでの性能比較になりますが、CPUへの負荷はほとんどない負荷での検証ですので、比較になっていると思います。パーティクルライブを眺めてfps の変動を比較しました。

平均fps はRTX3060よりも出ていますが1%タイルfpsが低いことから、fpsが極端に低下する場面が発生していることがわかります。

二つ目のグラフは同じ負荷をかけたときfps の推移を同じ時間軸で並べたものです(若干時間軸ずれてます、ご了承ください)A770 を搭載したPCは、瞬間的にfpsが低下している場面が多くあることがわかります。205秒~218秒目あたりの継続的なfps低下が発生した場面では、VRAMやメモリ量にも余裕があり、なぜこれほどまでfpsが落ち込んだのかは不明です。もしかしたらIntel Arc が苦手なシェーダーがあるのかもしれません。

まとめ:VRChat 用途では、人に勧められない Intel Arc A770 16GB

あくまで2024年7月時点では、Intel Arc A770 16GB は到底人に勧めれるグラボではありませんでした。Virtual Desktop でしか接続できない、たまにfpsが乱高下する、OVR Advanced Settingsが動かないなどの欠点を飲めるのであれば、価格の割にパフォーマンス良好なグラボではあります。特にOVR Advanced Settings が動かないのが特に致命的でメインマシンには使えないというのが所管です。ドライバーの改善等で不満点が解消される可能性はありますが、そう簡単に治るものでもないと思いますので、長い目で改善を期待するしかありません。来年にはIntel は次世代グラボを販売予定ですので引きつづき改善が進むはずです。現時点ではゲーム用のグラボはNVIDIAが圧倒的すぎるシェアで市場競争がいまいち働いてない印象なので、引き続きIntelさんにも頑張ってほしいですね。

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